郵政省等の「情報バリアフリー」に関する動向について

 NAP第1回例会報告  Ver1.3    1998.12.12 東京・新宿


 薗部 英夫 日本障害者協議会全国障害者問題研究会) 


1)はじめに 「障害者白書」の波紋

・総理府編 平成10年版「障害者白書」
      「情報バリアフリー」社会の構築に向けて

 国際障害者年、国連障害者の10年、アジア・太平洋障害者の10年
 障害者基本法、新長期計画〜「障害者プラン」
 「ノーマライゼーションの実現めざし、あらゆる面でバリアフリーな社会を実現する」

第1章 障害のある人と情報通信
     情報の障壁、情報弱者 
     「特に、福祉サービスについては、、、
      障害のある人と行政等のとのコミュニケーションを確保すること、、」
第2章 「情報バリアフリー」社会の構築に向けた政府等の動き
第3章 障害のある人に配慮した情報通信機器・システムの研究開発
第4章 情報通信機器・システムを活用した各生活分野での支援施策の状況
第5章 今後の課題 



2)前史


・「情報アクセスの保障」は、障害者の社会への完全参加と平等めざす国際障害者年を
 節に、主に「情報障害者」といわれる視聴覚障害者への情報提供サービスの大きな課題
 とされていた。
  点字図書館、聴覚情報センターの動き
  点訳、朗読サービスや手話通訳、要約筆記派遣などの運動
  現在も障害種別団体の大きな運動の課題としてとりくまれている



3)情報アクセス権は基本的人権、「情報バリアフリー」の社会めざして
  静かな、急激な90年代のメディア「革命」のなかで


権利としての情報アクセス
 ・情報にアクセスできること、情報を発信し、コミュニケーションできること、は現代の新しい基本的人権です。
  その権利は知的な障害をもつ人々も含めてすべての人たちに保障されなければならない

日本障害者協議会の基本政策提言
 1)すべての障害者が社会的な情報にアクセスできるため、文字放送の普及、
   手話通訳の配置。行政、マスコミ等の公共的な電子情報の公開と情報提供サービスの充実。
 2)日常生活用具に、「自立と社会参加のコミュニケーション機器」として、
   パソコン及びソフト、通信モデム等の助成枠の拡大。
 3)コミュニケーション福祉機器に関する地域での専門職員の育成と
  人的なサポートシステムを総合的に確立する。


略年表

     □世界的なうごき  ○日本の民間サイドの動き  ●日本の行政の動き


1948年 □世界人権宣言  人はみな平等

1975年 □障害者の権利宣言   「同年齢の市民と同じ権利を有する」

1981年 □国際障害者年、それにつづく国連・障害者の10年、さらにアジア・太平洋障害者の10年のうごき

<80年代後半〜90年代前半>
 ○パソコン通信の時代
  ・トーコロBBSと在宅講習事業  東京都+三菱財団  86年〜
  ・みんなのねがいネット  情報・コミュニケーションは人権 90年〜
        全国障害者問題研究会全国大会で特別分科会 93年〜
  ・プロップステーション  チャレンジドを納税者に 在宅就労を! 91年〜
                 →政官民をつなぐ「チャレンジドJapanフォーラム」開催
                   98年社会福祉法人認可
  ・杉並ここと  地域に根づくふれあいの場 93年〜

 先駆的な研究会
  ・福祉システム研究会(太田茂会長) 85年〜
  ・TORNイネーブルウェア研究会(坂村健会長) 87年〜


<90年代=グーテンベルクの活版印刷以来の電子化によるメディア革命が静かに、しかし一気に大衆化した>

・1991(平3)〜97年度 神奈川リハ「情報通信ネットワークによる障害者の社会参加」(神奈川県委託研究)


1993年(平成5年) 
障害者基本法
日本障害者協議会(JD)  情報通信ネットワークで特別委員会設置
障害者の機会均等に関する基準規則(国連総会11.20) 
   最重点が「アクセス」。
   「どのような障害を持つ人に対しても、政府は、
   情報とコミュニケーションを提供するための方策を開始すべきである」
●<郵政省>
   身体障害者の利便の増進に資する
   通信・放送身体障害者利用円滑化事業の推進に関する法律
      これにより 「放送・通信機構」がTAONET 94年〜
                      字幕制作助成


1994年(平6)
○第1回BBS懇談会開催(JD)
   情報と情報をつなぐ場<ネットBBS>
   人と人とをつなぐ場<ぱそボラ>
○NHK教育テレビ あすの福祉 「障害者とパソコン通信」放送


1995年(平7) 
1月17日 阪神大震災と情報ボランティアの衝撃
       時代はいっきにインターネットの時代へ
       VCOM(金子郁容代表) シーズ・プロップ・JD

○コミュニケーション福祉機器展・TOKYO 主催 朝日新聞東京厚生文化事業団
●郵政省の電気通信審議会最終答申
    「情報アクセス、情報発信は新たな基本的人権」
こころWeb開設(日本IBM)
○福祉講座でBBSとインターネット  主催 東京都障害者会館
    (翌年より障害者パソコン通信講習会を毎年開催)
○第18回総合リハビリテーション研究大会に 第3分科会「障害者と情報保障」設置
障害者の情報通信ネットワーク提言95(JD)
●<郵政省>
   高齢者・身体障害者の社会参加支援のための情報通信の在り方に関する調査研究会
     ライフ・プロモーション部会(主査 高橋紘士 現在・立教大学教授)
     バリアフリー部会(主査 清原慶子日本ルーテル学院大学教授)」
     部会では、情報通信を利用したノーマライゼーションの実現のため、
     情報環境のバリアーフリー(障壁除去)のために、郵政省の枠組みをこえて、
     個人ではなく社会がどのような条件整備をしていったらよいのかを検討。
     当初の「情報障害克服」部会を「バリアフリー」部会と名称変更。
     調査研究会はそれぞれの部会の検討を受けて、
       ・郵政省通信政策局情報企画課監修 『共生型情報化社会の展望』NTT出版 1996年
       ・高橋紘士・生田正幸他『福祉情報化入門』有斐閣 1997年
●<通産省>「障害者等情報処理機器アクセシビリティ指針」(90年公表)を改訂
          都道府県で実演会開催
●<政府>「障害者プランーノーマライゼーション7年計画」 発表


1996年(平8)
●<厚生省>
   ノーマネット(障害者情報ネットワーク)開設(運営 日本障害者リハビリテーション協会)
   さらに「障害保健福祉研究情報システム」を構築
●<郵政省>
   高齢者・障害者の情報通信の利活用に関する調査研究会  報告


1997年(平9)
パソコンボランティア・カンファランス(PSVC)97 
      JDプロジェクト編『パソコンボランティア』日本評論社 7月
●<郵政省+厚生省>
  ライフサポート情報通信システム推進研究会
      ・ガイドライン部会


1998年(平10)
パソコンボランティア・カンファランス(PSVC)98
      NAGANOパラリンピック文化プログラム
福祉・情報通信フロンティアin長野(郵政省 信越電気通信監理局)
障害者に関する総合計画提言(JD)
      情報保障に関する研究会提言(清原慶子委員長)
○パソコンボランティア・ホームページ  http://www.psv.gr.jp/
<郵政省>「通信白書」
障害者等電気通信設備アクセシビリティ指針
●電子協のもと「電気通信アクセス協議会」発足
●<郵政省+厚生省>
   「情報バリアフリー」環境の整備の在り方に関する研究会
●<総理府>「障害者白書 「情報バリアフリー」社会の構築にむけて
WeCAN(障害者のテレワークのネットワーク組織)発足
NAP(当事者を中心としたアクセシビリティ研究会)発足
○毎日新聞社「ユニバーサロン」(パソボラ支援)開設
○文部省+日本短波放送
  「マルチメディアを活用した障害者の生涯学習実現に関する研究」


1999年(平11)
パソコンボランティア・カンファレンス(PSVC)99  3.6-7 早大国際会議場


5)最近の政策動向

<郵政省>
 研究会
 研究開発
 支援措置
   助成金 字幕、研究開発助成金
   財投   視聴覚障害者むけ放送番組制作施設整備事業
   補助金  情報バリアフリー・テレワークセンター(金沢市)
   情報提供 TAONETによる
 *メニューは豊富でも予算が脆弱、さらにソフト面については予算措置なし

<厚生省>
 障害者プランとノーマネット 
 そしてDAISY