飯塚 慎司
この横浜に住んでおります飯塚です。丁寧なご紹介をしていただきましてあり がとうございます。今回、私が参加させていただきましたのは、私が、障害者 のパソコン環境のセットアップ、その後のお手伝いなどをしている、というこ とが一点と、IBMの中で仕事として障害者向けの機器の開発やプロモートな どもしていますので、その経験から得たことを皆様と共有するようお話ししな さいということだと理解しています。
もう一つ、横浜住人ということで、余計な交通費を支給しなくともよい。これ も理由かもしれません。
さて、私は肢体不自由に的を絞ってということですので、本日は、簡単に障害 の種類や特徴の説明、次に、コンピュータや通信の利用が生活にどんな影響を 与えるのか、どうやってコンピュータ、インターネットを操作するのか、使い にくいHPとはどんなページなのか、こんなコンテンツやブラウザがあればい い、というようなお話しをデモを交えながらしていきたいと思います。
障害の種類について簡単にお話しします。ただし、私自身は医者でもリハの専 門化でもありませんので、内容が古かったり、抜けている事があるかもしれな い事はお許しください。どの障害も、身近なものです。また、高齢化に伴う衰 えによる障害と一致する部分も多いはずですから、できれば、自分のことと思っ て、想像しながら聞いて下さい。
まず、脊髄損傷ですが、不慮の事故で、脊椎の中を走る脊髄という神経を損傷 すると、その部位によりますが、手足の四肢麻痺を引き起こしたり、温覚、痛 覚、触覚、振動覚、運動覚などの感覚を失う場合があります。こういった場合 はコンピュータを片手で、あるいは指先が動かない場合はペンを手にくくりつ けて、両手が駄目であれば口に割り箸など咥えてキーボードなど操作します。
ですから、キーボードの同時押しや、ノートパソコンのカバーを開けたりといっ た動作、マウスの操作、電源スイッチのオンオフの操作などがし難い・出来な い場合があり、いろいろな工夫が必要になります。
バイクや車でかっとばすのが好きな方、お酒が好きでプラットフォームで千鳥 足の方、スノボーで技を極めようとしている方、危険率が高いです。お気をつ けください。
次に脳性麻痺について説明します。これから子供を持つ予定の方は?日本でも、 欧米でも1,000組みの出生に対し平均2件の割合でこの障害を持つ子が生まれま す。理由は、遺伝的要因、脳内構造の形成異常、血管障害、中枢神経感染症が 多いそうです。出産時のトラブルによる分娩時仮死による障害は12%程度のよ うです。症状としては、手足を自由に動かせない、あるいは動かそうとすると 意に反して体が動いてしまう、ということがあります。サポートしていると、 よく、パンチなどありがたくいただきそうになることがあります。これを不随 意運動といいますが、キーボードやマウスの操作をとても困難にします。何か 一つのキーを押そうとすると、他のキーをバラバラと押してしまったり、マウ スは動かせてもクリックが上手にできず、マウスポインタが明後日の方向に飛 んでいってしまったりで自由に操作ができません。
難病中の難病です。有名なホーキング博士もこの病気のために体の自由を失っ ています。まず、筋萎縮性側索硬化症は(Amyotrophic lateral sclerosis: ALS)筋肉を動かす神経が機能しなくなっていく病気です。進行性筋ジスト ロフィーは、(Progressive muscular dystrophy:PMD)骨格筋の変性や壊 死を主病変とする筋肉が機能しなくなっていく病気です。その筋ジスにも、1 0以上の種類があり、それぞれ症状も違うようです。おおよそ全国で5000 人がこの難病で苦しんでいます。
特徴としては、体はうごかなくとも、聴覚、視覚、痛覚といった感覚は最後ま で残ることと、脳そのものの機能は失われるわけではないことが上げれます。 パソコンの利用にあたっては、とにかく動く部位を探し出し、一つのスイッチ だけで使える特別なソフトを導入します。動く部位というのは、指の先、まぶ た、眼球、頬あったりしますが、大抵の場合、本当にごくわずかの動きしかえ られず、日々のセットアップも苦労が強いられます。
それでも、唯一残されたコミュニケーション手段として、パソコンは重要な道 具となっています。
その他の障害としては、内臓疾患、脳の損傷、 脳卒中片麻痺、慢性関節リウマチ、加齢に伴う障害等があります。40歳以 上の方、飲み過ぎ、ストレスが過大の方は特に要注意です。と、こんな話 を聞かされている事がストレス!?
さて、肢体に障害を持つ方々にとって、コンピュータや通信、インターネット は生活していくうえで重要な要素を占めるようになってきています。
まず、自分の生活環境を改善することにコンピュータが使われることがありま す。テレビやビデオ、エアコン、電話といったものを助けを借りずに操作した い、好きなアーティストのCDを何度も聞いたり、親には頼みにくいようなビ デオをこっそり見たいということもあるかもしれません。
また、地域社会で生きる上で、友達や家族との人間関係を対等に保つことは重 要です。しかし、体で表現したり、言葉が発声できない障害者は、対等なコミュ ニケーションが難しい。そのような方々には、パソコンを利用したコミュニケー ション用の機器が有効な時があります。わずかにうごく指先や眼球の動き、思 うようにならない手や足で懸命に操作して、文章を入力し喋らせたり読ませた りして、対等なコミュニケーションを行うのです。
そして最近は、インターネットの利用を希望する方々が増えています。それは、 インターネットは今までお話しした(自分の回り) と YOU (家族、友人) の世 界ではなく、Theyの世界、つまり社会との貴重なドアを開くものだからです。
インターネットの重要性は皆様の方が良く知っていると思います。そのインター ネットに参加できるということは障害者の歴史を振り返っても、とてつもなく 画期的なことなわけです。しかし、へんなHTMLの記述一つですぐにその扉はと ざされてしまう。そんな悲しい事例も増えてきています。
さて、では、どんなページを見ていのるかご紹介します。やはり多いのは新聞 のようです。今までは持ってもらわなくてはいけないので、まず、頼みづらい、 こっそり読みたいところが読みにくい。あるいは、福祉機器について調べたり、 同じような環境にある人たち、ボランティア団体についての情報収集、訪問先 の事前調査、トイレの情報。趣味のページ、TV番組のページ、コンピュータ の利用方法について、等々・・・あるいは、公のサイトで制度についてしらべ たり…今だとやはり介護保険、それから、少し照れながら言っていたのですが、 大切な人に花を贈れたのが嬉しかった・・とも言っておりました。食べたかっ たタラバガニを買っちゃったとか…・
それから、やはり性の情報が豊富であるというのも、善し悪しは別にして重要 なポイントです。人に頼みにくいことですから。
では、どうやってコンピュータにアクセスし、インターネットを利用している のかを、簡単にお見せしたいと思います。
余談ですが、支援する方法には大別すると二つ有ります。一つは既存の情報機 器のハード・ソフトを改良して使いやすくする方法と、まったく異なる方法に 置き換えて目的を実現する方法の二つです。
まず、お見せしますのは Windows に標準で入っているユーザー補助機能の一 つである固定キー機能とフィルター機能です。これは機能拡張の例です。
(ここで、シフトキーとフィルターキーのデモ)
次に、わずかに動く指先だとか瞬きを一つの入力としてコンピューターを操作 する方法をお見せします。
(WiViKでデモ 2分)
さて、では、実際にインターネットを、マウススティックで操作している方を 想定して実演してみます。IEでもネットスケープでも同じですが、TABキーで 巡回して、必要な部分でエンターを押すという方法をとります。
それだとどうしても操作できない場合は、マウスやキーボードなどをフルに活 用する必要がでてきますので、操作はとたんに大変になります。
(実演 2分)
これで、だいたい操作することは可能ですが、次のような場合、大変操作しに くいことがご理解いただけると思います。
なかなか具体的に言うのは難しいのですが、今お話ししたような問題が無いこ
と、つまり、
リンクは20程度に抑えて、
ページの長さは1ページにおさまるようにして、
かならず、TABですべて巡回できること
フレームも出来るだけ使用しないということ
でしょうか。
ようは、一言で言えばシンプルなのが良いということになります。
いかがでしたでしょうか、肢体不自由者にもインターネットのアクセシビリティ が重要なことをご理解いただけましたでしょうか。
さて、最後に一つ重要なことを、今お話ししたような環境をセットアップする のは?本人ではまずできません。マウスのボールの掃除一つとっても本人には 難しいものです。プリンタ内部で紙がつまると、これまた大変、私たちが普通 にやっていて、実は障害があるために出来ないことが沢山あります。ですから、 どうしても、人のサポートというのがとても大切で、そのインフラと実際にワー クできるリソースが今求められています。そういったサポートをしているグルー プは全国に沢山ありますので、ここにいる皆さんにも、ぜひ、そういったとこ ろに参加して、一緒に苦労してみていただければ、きっと、今、コンピュータ やインターネットに何が望まれているのかを新たな視点で良く理解していただ けると思います。
以上で私のほうからのお話しは終わりにさせていただきます。
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