聴覚障害者のWebアクセシビリティ
山下 智慎
○はじめに
従来(初期)のWebはインターネットを通じて文字情報を提供するだけのも
のだった。日本語の読み書きができる聴覚障害者にとっては、これは多大なメ
リットであり、デメリットはほとんど無いといってよかった。現状でも文字情
報の市場は非常に大きなものになっており、利用が現状の範囲であれば不満は
あまり無いといえる。しかし、最近は技術の進歩と共にWebの利用範囲が急
速に拡大している。
最近普及が著しいのが音声情報である。例えば、今では実際にWebを利用し
た教育環境のインフラが整いつつあるので、Webを利用した音声によるセミ
ナーなどの教育が可能になってきている。また、総理大臣や一企業の社長の挨
拶がWebでされるようになることも珍しくなくなってきている。その場合、
聴覚障害者に対して如何にして情報をサポートができるのかがポイントになる。
○問題点
- Webに音声情報が貼り付けられてあった場合、聴覚障害者は聞こえな
いため、この音声情報を情報として得ることができない。この音声情報をどう
保障するのか?現状では情報を保障する仕組みがない。
- Webに音声情報が貼り付けられてあった場合、その情報をクリックするとそ
のまま音が出るようになっているのかそれとも音がでずにダウンロードできる
ようになっているのか分らない場合がある。さらに、音声関連のプラグイン
(plugin)をいつのまにか仕込んであって、別のページにアクセスした時、突
然音が鳴り始めても気がつかない場合がある。興味つつにクリックしてみたら
いきなり音声が出てそれが分らず周りに迷惑をかけてしまう。表示上の補足説
明がなくてもそういうことがないような配慮が欲しいが、現状ではない。
- 聴覚障害者(特に高齢者)の中には日本語の読み書きが苦手な人がいる。そう
いう人に対しては、例えば漢字にルビを振って表示できるような仕組みがある
といいが、今のところルビが振ってあるページと言うのはほとんど見かけない
のではないか。実際にルビを振れるような仕組みはあると思うが、まだ一般的
ではないのではないかと思う。ページのデザイン(レイアウト)の関係もあり、
それを考慮した仕組みが現状ではない。
- 日本語と手話は異なる言語であるので、日本語では理解できなくても手話なら
理解できると言う聴覚障害者もいる。現時点では音声情報を手話(動画)に変
換する仕組みがない。また、手話をスムーズに表示できる表示能力もない。
○課題
1) マルチメディア対応
-
a) 今後益々増えていくであろう音声メディアの文字メディアへの対応。We
b上で音声を自動的に文字に変換して表示できる仕組みの構築
- b) 今後益々増えていくであろう音声メディアの動画メディアへの対応。We
b上で音声を自動的に動画(この場合は手話)に変換して表示できる仕組
みの構築
そういう仕組みを構築した上で、一例として表示させる側で音声情報に対応す
る文字や動画の表示非表示のオプションを設定し、ユーザ側で選択できるよう
な形になればよいのではないか。
2)ガイドライン作成
- 音声メディアを入れる場合のページ作成のガイドラインの作成。
- 聴覚障害者にもあらゆる情報を得ることができるような配慮の必要性。
3)表示能力(回線?)の強化
- 手話の表示能力は基本的に動画の表示能力の問題。
- 音声メディアと同程度のレベルで貼り付けることができる程の表示
能力の向上
4)Webの利便性
なぜコンピュータやインターネットを困難なく利用できることが重要なのか?
聴覚障害者の場合は、音による情報が全く入らないことと、コンピュータ関連
の講習会では講師はほとんど手話の分らない聴者の講師のため知識を身につけ
ることが難しいという問題があるため、利用が難しい場合には普及も難しい。
最後に
アクセシビリティを考える時、Webだけでなくブラウザも含めて、あらゆる
人間に対してあらゆる情報を保障する仕組みを組み入れるようなアクセシビリ
ティを考えていくという方向性を持って取り組んで頂きたい。
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