第1回WebコンテンツJIS(JIS X 8341-3)研究会

開催案内

JIS X 8341-3:2004 「高齢者・障害者等配慮設計指針−情報通信における機器、ソフトウェア及びサービス−第三部: ウェブコンテンツ」 (いわゆる WebコンテンツJIS)が、去る 6月20日に公示されました。Network Accessibility Project (NAP)は、規格制定の過程からこの規格に注目しており、昨年 7月と 11月には、この規格の素案に関する研究会をITRC(日本学術振興会産学協力インターネット技術第163委員会)UAI分科会と共催しました。

NAPおよび UAI分科会では、この規格が公示された今、JIS X 8341-3 の精神や内容を理解するとともに、Webアクセシビリティの現状を考慮した上でのこの規格内容の吟味や不足点の指摘などを進めていくことが重要だと考えています。そこでUAI分科会と NAPでは、今後 JIS X 8341-3の研究会を開催していくこととなり、下記のとおり第1回の研究会を開催することになりました。第1回となる今回は、JIS X8341-3を正しく理解し、今後の議論を進めていくために必要な共通理解をすることを目的とします。

今回の研究会では、まず今年度のJIS X 8341-3研究部会の体制について、UAI分科会主査で、平成16年度の「ウェブアクセシビリティ国際規格調査研究部会(WG2)」主査でもある渡辺隆行氏からお話しいただきます。次に、 WG2 副査で、JIS X 8341-3 を策定した昨年度までの研究部会の副査でもある梅垣まさひろ氏に、刊行されたJIS X 8341-3の概略を説明していただき、それに対する質疑応答のかたちで議論を進めていきます。JISの内容は多岐に渡り、議論すべきことも多いと思われますので、今回はあまり細部に立ち入った議論は行わず、JIS X8341-3全体を検討し、今後どのようなことを議論すべきかを検討します。その上で、下記メーリングリストや新たな研究会などでの議論を重ね、2004年中を目処により広い視野から議論を深めていきたいと考えています。

なお、渡辺、梅垣両氏には、個人的な立場で本研究会にご参加いただくものです。

日時
2004年7月31日(土)13時〜17時
主催
場所
東京女子大学 善福寺キャンパス 24101号室(24号館1階)
〒167-8585 東京都杉並区善福寺2−6−1
中央線西荻窪駅または吉祥寺駅からバスで15分あるいは徒歩20分。
定員
100名 (先着順に受け付けます。参加の可否は後日メールにてお知らせします。)
参加費
無料
お問い合わせ先
jis-workshop@accessibility.org

プログラム

  1. 今回の研究会開催の経緯(渡辺隆行氏)
  2. 今年度のJIS WGの体制 (渡辺隆行氏)
  3. JIS X 8341-3に関する説明 (梅垣まさひろ氏)
  4. JIS X 8341-3に関する意見交換
  5. 今後の予定について

参考資料

参加を予定されている方は、JIS X 8341-3を熟読の上、ご参加ください。JIS文書は、下記Webサイトで閲覧・入手可能です。

オンライン閲覧:
日本工業標準調査会の「JIS検索」で「X8341-3」と入力して検索すると、JISのPDF文書を閲覧できます。ただし、ここでは保存や印刷はできません。
オンライン購入(3,045円、カラー印刷56ページ):
日本規格協会JSA Web Storeで「X8341-3」と入力して検索すると、規格票のPDFや冊子を購入できるページが表示されます。

また、以下に挙げる文書も本件に関連が深いものですので、なるべくその内容を理解した上でご参加ください。

  1. W3C Web Content Accessibility Guidelines 1.0
  2. Web Content Accessibility Guidelines 2.0 Working Draft
  3. アメリカ、リハビリテーション法 508条施行規則 Electronic and Information Technology Accessibility Standards

なお、これらの文書に関する日本語の情報としては、以下のようなものがありますので、参考にしてください。

メーリング・リストについて

JIS X 8341-3に関連する事項を中心に、 Webに関連する技術的な話題をとり扱うことを主な目的として、 NAPにWebアクセシビリティに関する話題を取り扱うメーリング・リストが開設されています。 今後の情報などもこのメーリングリストを中心に流していきますので、研究会に参加される方はもちろん、当日の参加はできないがこの問題に関心があるという方もぜひ登録してください。登録方法など詳しくは、 web@accessibility.orgメーリング・リストに関する情報ページ をご覧ください。なお、このメーリング・リストへの投稿は、
<URL: http://lists.accessibility.org/web/>
で逐次公開されています。

研究会記録

発表資料

今回の研究会開催の経緯(渡辺隆行氏)

WebコンテンツJISに対する取り組みの経緯

NAP中根氏、W3C石川氏の紹介.

今回の内容

JIS X8341-3に関連した今年度のJIS研究部会の体制 (渡辺隆行氏)

新しいWGの役割

  1. ウェブアクセシビリティ規格の国際協調を目指した、W3C/WAIとの協調作業
  2. JIS X 8341-3:2004の国内普及活動と改善 -- これが今回の研究会の主目的

JIS X 8341-3に関する説明と意見交換 (梅垣まさひろ氏)

適用範囲(1)

適用範囲(2)

一般的原則

基本方針(a)
可能な限り高齢者・障害者が操作または利用できるように配慮する
「操作」
物理的に操作 (例: フォームから入力)
「利用」

基本方針(b)

いろんなブラウザに対応せよ

基本方針(c)

企画から運用に至るプロセスで情報アクセシビリティを常に確保し、更に向上するように配慮する

基本的要件

「身体機能および構造の制約への対応」

推奨要件

a)認知及び記憶への過度な負荷をかけずに、ウェブコンテンツを操作又は利用できるユーザビリティの高いページを。

b)利用する情報通信機器、及び利用環境を限定せずに、多様な環境でウェブコンテンツを操作又は利用できる。

c)不慣れな人でも利用できる。

必須と推奨と、合わせワザ

JISの読み方 -- ソシオメディアの植木さんの整理:

必須
しなければならない
推奨
することが望ましい
合わせワザ
することが望ましいが、できない場合は ... しなければならない

5.1 規格及び仕様への準拠(a)

a) ウェブコンテンツは、関連する技術の規格及び仕様、並びに文法に準拠して作成しなければならない

5.1 規格及び仕様への準拠(b)

b)ウェブコンテンツには、アクセス可能なオブジェクトなどの技術を使うことが望ましい

質疑

Q: Javaでアクセシビリティが確立されている、というのはアプリケーション での話は?

A: 梅垣:

Q: Java でアクセシブルに書くことができる、という話か?

A:梅垣: それ用のクラスライブラリが用意されているのでそれを使えばよい

Q: 適用範囲について、社内のグループウェアの開発をしている。 ある程度適用範囲がわかるがパッケージとしても販売している。 基本的にはJISに対応しなければならないと思っているがそういった製品についてはどうか。

A: 梅垣:

A: 渡辺:

その他の発言:

梅垣:

その他の発言

Webアクセシビリティを構成する要素 (渡辺)

  1. Webのアクセシビリティ問題の研究、理解
  2. Web技術がアクセシビリティに配慮
  3. Webコンテンツ作成側がアクセシビリティに配慮して作成
  4. Web利用ソフトウェアがアクセシビリティ機能を利用できる
  5. Webの利用者に配慮が適合している
  6. Webの製作者と利用者の規範
  7. Web作者への配慮
  8. Webの自由を損なわない

5.2 構造と表示スタイル(a)

ウェブコンテンツは見出し、段落、リストなどの要素を用いて文書の構造を記述しなければならない

5.2 構造と表示スタイル(b)

表示スタイルは文書の構造と分離。 見た目はスタイルシートを用いて記述。 ただしスタイルシートを使用できない場合、意図的に使用しない場合でも支障が生じてはならない。

5.2 構造と表示スタイル(c)

表はわかりやすい表題を明示し、できる限り単純な構造にして、適切なマーク付けによりその構造を明示しなければならない

5.2 構造と表示スタイル(d)

d) 表組みの要素をレイアウトのために使わないことが望ましい

Web Accessibility toolbarのデモ

(渡辺氏)

5.2 構造と表示スタイル(e)

e)ページのタイトルには、利用者がページの内容を識別できる名称を付けなければならない

5.2 構造と表示スタイル(f)

f) フレームは必要以上に用いないことが望ましい

5.2 構造と表示スタイル(g)

g) 閲覧しているページがサイトの構造のどこに位置しているか把握できるように、階層などの構造を示した情報を提供することが望ましい

質疑

Q: 構造と表示スタイルの分離が挙げられているのに「単語の中にスペースを入れない」といった表示の話が入っていたりする。こういったことは議論にならなかったのか?

A: 渡辺: 完全に分離することは難しい; 読む人にわかりやすいところに入れた

梅垣: 前者はタグの話。後者は文字の話。

Q: 見た目に綺麗なページにはヘディングが使われていないという話があったが、HTMLでは綺麗にしようとするとヘディングは使いにくいのか?

A: 梅垣:

Web製作会社の立場から名誉のために言わせてもらうと構造もちゃんと考えて作っているし、見た目にも綺麗になるようにしている。コニカミノルタのサイトなど。

中根 (NAP):

DreamWeaver は良くできているがCSSを知らないと使いにくい

ヘディングが使われなかった理由 (デザイナーの立場から):

現場の人の意識の話:

Q: パンくずリストはインターネットを使い慣れていない人にはわからないのでは? 音声ブラウザに読ませる場合などに関する議論もあったのか?

A: 梅垣:

湊氏 (ソシオメディア): Web Accessibility Toolbar 日本語版作者

梅垣:

5.3 操作及び入力(a)

a) ウェブコンテンツは特定の単一のデバイスによる操作に依存せず、少なくともキーボードによってすべての操作が可能でなければならない

5.3 操作及び入力(b)

b)入力欄を使用するときは、何を入力すれば良いかを理解しやすく示し、操作しやすいよう配慮しなければならない

5.3 操作及び入力(c/d)

c) 入力に時間制限は設けないことが望ましい制限時間があるときは事前に知らせなければならない

d) 制限時間があるときは、利用者によって時間制限を延長もしくは解除できることが望ましい

5.3 操作及び入力(e)

e) 利用者の意思に反して、又は利用者が認識もしくは予期することが困難な形で、ページの全部もしくは一部を自動的に更新したり、別のページに移動したり、又は新しいページを開いたりしてはならない

5.3 操作及び入力(f)

f) サイト内においては、位置、表示スタイル及び表記に一貫性のある基本操作部分を提供することが望ましい

5.3 操作及び入力(g)

g) ハイパーリンク及びボタンは、識別しやすく、操作しやすくすることが望ましい

5.3 操作及び入力(h)

h) 共通に使われるナビゲーションなどのためのハイパーリンク又はメニューは、読み飛ばせるようにすることが望ましい

5.3 操作及び入力(i)

i) 利用者がウェブコンテンツにおいて誤った操作をしたときでも、元の状態に戻すことができる手段を提供しなければならない

質疑

Q: 5.3(i)について、利用者が操作を誤ったときにそのことをちゃんと明示して欲しい。フィードバックが得られないと不安になる。

A: 渡辺:

Q: JISで日付の入力について年月日でするように、という規定があると話で聞いたが...「しなければいけない」の要件ではない?

A: 梅垣:

Q: 5.3(f)について、定義をはっきりして欲しい。 「メインメニュー」「本文へ」「ナビゲーション」など、 製作者によって言い方がばらばらだと効果が薄れる。 また、表記の内容についての議論はあったか?

A: 梅垣: 表記の中身の標準化までは議論しなかった。一般論としてはユーザビリティはユーザの経験を大切にする。だんだんとサイト間で統一されていくといいのでは?

A: 渡辺: 普遍的なサイトの共通機能はHTMLが持つべき

Q: 5.3(e)について、サイト管理者が異なる場合に新しいウィンドウを開いた方がいい、という意見の者もかなりいるが、策定過程でそういった議論はあったか?

A: 梅垣: 策定段階ではそういう議論はなかった。 「予期せずに」という点がキー; あらかじめその点を明記してあれば良いのではないか

A: 渡辺: 予期しなくてわからないことが混乱を招く

Q: 例えばスタイルシートで新しいウィンドウを開く場合には色を変える、といった方法はどうか

A: 梅垣: 色だけに依存しない、という項目もあるのでそれだけではまずい

画像を用意して alt でその点を明記している例もある (富士通など)

5.4 非テキスト情報(a)

a) 画像には、利用者が画像の内容を的確に理解できるようにテキストなどの代替情報を提供しなければならない

5.4 非テキスト情報(b)

b) ハイパーリンク画像には、ハイパーリンク先の内容が予測できるテキストなどの代替情報を提供しなければならない

5.4 非テキスト情報(c)

c) ウェブコンテンツの内容を理解・操作するのに必要な音声情報には、聴覚を用いなくても理解できるテキストなどの代替情報を提供しなければならない

5.4 非テキスト情報(d)

d) 動画など時間により変化する非テキスト情報には、字幕又は状況説明などの手段によって、同期した代替情報を提供することが望ましい

5.4 非テキスト情報(e)

e)アクセス可能でないオブジェクトには代替情報を提供する

質疑

Q: (質問というより宣伝)森田: "Web Site Design" で「実践アクセシブルHTML」の連載をしていた。連載の第1回で、alt だけで12ページ書いた。 http://w3j.org/ で原稿を公開している。

Q: 音の情報について、トップページにアクセスした段階で音が出るサイトもあり、こういったサイトは良くないという議論もあるが、そういった話は策定段階であったか?

A: 梅垣: トップページでは事前に知らせられない。JISではそこまでは求めていないが個人的には止めた方がいいと思う

5.5 色及び形(a)

a) 色だけに依存しない

5.5 色及び形(b)

b) 形あるいは位置だけに依存しない

5.5 色及び形(c)

c) 背景色と前景色には十分なコントラストを取る

5.6 文字

a)文字のサイズ及びフォントは必要に応じ利用者が変更できるようにしなくてはならない

b)フォントを指定するとき、サイズ及び書体を考慮し読みやすいフォントを指定することが望ましい

5.7 音

a) 自動的に音を再生しないことが望ましい。自動的に再生する場合は再生していることを明示しなければならない

b) 音は利用者が出力を制御できることが望ましい

5.8 速度

a) 変化又は移動する画像又はテキストは、その速度、色彩、輝度の変化などに注意して作成することが望ましい

b) 早い周期での画面の点滅を避けなければならない

5.9 言語

a) 言語が指定できるときは、自然言語に対応した言語コードを記述しなければならない

5.9 言語(b-d)

b)理解しづらいと考えられる外国語は多用しないことが望ましい.

c)理解しにくいと考えられる用語は多用しないことが望ましい.

d)読みの難しいと考えられる言葉は多用しないことが望ましい.

5.9 言語(e)

e) 表現のために単語の途中にスペース又は改行を入れてはならない

5.9 言語(f)

f) ウェブコンテンツは文章だけではなく、わかりやすい図記号、イラストレーション、音声などを合わせて用いることが望ましい

WCAG 2.0 の WG の紹介 (渡辺)

WCAG 2.0本文

最後に

中根: NAPのもともとの活動原則としては、裾野を広げてより多くの人に理解してもらいたい。今回のような大人数の会も有益だが従来のような少人数での勉強会も開催していきたい。

梅垣: 今年度のJISの委員会は国際化が中心。皆さんも会社内などで啓蒙活動に励んで欲しい。必要ならJISの委員会にコンタクトしてもらえれば説明に行ったりもできると思う。

(17:03閉会)


jis-workshop@accessibility.org