WebコンテンツJIS研究会資料1

注意:渡辺、梅垣氏とも,個人的な立場で研究会に参加し発言しています.

1. WebコンテンツJISに対する取り組みの経緯

JIS X 8341-3:2004 「高齢者・障害者等配慮設計指針-情報通信における機器,ソフトウェア及びサービス-第三部: ウェブコンテンツ」 (いわゆる WebコンテンツJIS)が,去る 6月20日に無事 公示されました. NAPITRCUAI分科会は1年前からこのJISに関心を持っており,これまでに以下2回の研究会を開催しました.

昨年6月1日には,JIS原案に対するパブリックコメント提出のための勉強会を石川准先生と中根氏が中心となって準備し,JISのウェブアクセシビリティ指針策定部会(WG2)の中村広幸先生と植木真氏,さらにW3Cの石川雅康氏と萩野達也先生を講師にお迎えして,「Webアクセシビリティに関するJIS化パブリックコメント研究会」として開催しました.その後,昨年夏のパブリックコメント募集は見送られることになり,梅垣氏と渡辺が新たにJIS策定部会に参加する事態となりました.

その後JISのウェブアクセシビリティ指針策定部会は,2003年度中の完成を目指して精力的にJIS素案の策定作業を行い,JIS原案の公開レビューが昨年10月24日から11月24日まで実施されました.そこで,これに合わせて昨年11月9日に「Webアクセシビリティに関するJIS素案研究会」を開催し,参加者の皆様から有益なパブリックコメントをJIS策定部会に提出していただきました.その後,JISが完成し,今回JIS X 8341-3として発行されることなったわけです.

NAPおよびUAI分科会では,この規格が公示された今,JIS X 8341-3 の精神や内容を理解するとともに,Webアクセシビリティの現状を考慮した上で,規格内容の吟味や不足点の指摘などを進めていくことが重要だと考えています.そこで今回,昨年から数えると通算3回目ですが,新たに第1回としてJIS X 8341-3の研究会を開催することになりました.今回は,JIS X8341-3を正しく理解し,今後の議論を進めていくために必要な共通理解を深めることを目的としています.

2. JIS X 8341-3に関連した今年度のJIS研究部会の体制

日本規格協会 INSTAC (情報技術標準化研究センター)の「情報技術分野共通及びソフトウェア製品の アクセシビリティの向上に関する標準化調査研究」委員会のもとに設置された「ウェブアクセシビリティ指針作成部会」は,事業の終了とともに2003年度末で解散しました.2004年度からは新たに「情報アクセシビリティの国際標準化に関する調査研究開発」委員会が開始されました.この委員会の下に「ウェブアクセシビリティ国際規格調査研究部会」が設置され,渡辺が主査,梅垣氏が副査を務めております.以下,「ウェブアクセシビリティ国際規格調査研究部会」が担っている2つの役割を説明します.

2.1 ウェブアクセシビリティ規格の国際協調を目指した,W3C/WAIとの協調作業

ウェブアクセシビリティ規格の国際協調に関しては,W3C (World Wide Consortium)を無視して,JIS X 8341-3単独でISO (International Organization for Standardization)に提案することはしません.しかし,W3Cが策定中のWCAG (Web Content Accessibility Guidelines) 2.0が,ISO/IECガイド71及び日本が国際提案中のセクターガイドラインの元でISOに国際提案されることが望ましいと考えています.したがって今年度の研究部会の活動として,WCAG 2.0のワーキングドラフトに欠けているところ,特に日本などの漢字文化圏特有の配慮事項,がWCAG 2.0に取り入れられるように働きかけていきます.これに関しては,本研究会の最後に30分程度時間をとって,改めて説明します.

これ以外にも,W3C以外の国,特にアジアの国々との情報交換と協調も視野に入れています.

2.2 JIS X 8341-3:2004の国内普及活動と改善

本研究会を開催した理由のひとつが,この「国内普及と改善」です.本研究会が,「JIS X 8341-3 の精神や内容を理解するとともに,Webアクセシビリティの現状を考慮した上でのこの規格内容の吟味や不足点の指摘などを進めていく」ことの助けになればと願っております.JIS発行後,JIS関連の本などもいろいろ発行されていますが,本研究会では中根君,石川先生,W3Cの石川さんなどの専門家とともに,ここに集う皆様の英知を集めて,日本国内のウェブアクセシビリティの向上を目指したいと思っています.

3. JIS X 8341-3に関する説明と意見交換

梅垣さんにバトンタッチして,JIS X 8341-3の説明をしていただき,自由な意見交換を行いたいと思います.


4. WCAG 2.0 WDの紹介

W3Cは1999年にWeb Content Accessibility Guidelines 1.0を策定しました.日本でもこのWCAG 1.0をベースにしたガイドラインが総務省などの国レベルや地方自治体レベル,さらに企業レベルまで広く策定され,日本のウェブアクセシビリティ向上に貢献してきたのは皆様ご存知のとおりです.しかしWCAG 1.0が完璧というわけではなく,HTMLという特定の技術に依存しているとか,ガイドラインの内容が現時点で必ずしも適切でないなどのいくつかの欠点が指摘されてきました.そこでW3CのWCAGワーキンググループは,2005年の早い時期にW3Cの勧告にすることを目指して,WCAG 2.0を策定中です.

JIS X 8341-3策定時にはまだWCAG 2.0は存在していなかったので,JIS策定部会は,W3Cの正式な勧告文書であるWCAG 1.0を基本にして,1.0の欠点を補正するとともに日本固有のガイドラインを追加する形でJISを策定しました.しかし,2005年にWCAG 2.0がW3Cの勧告になると,日本でもWCAG 2.0に対応することが必要になってきます.2004年度の「ウェブアクセシビリティ国際規格調査研究部会」が「ウェブアクセシビリティ規格の国際協調を目指した,W3C/WAIとの協調作業」を活動の主軸に据えているのも,これが理由のひとつです.日本でも利用できるようにWCAG 2.0を国際化し,WCAG 2.0に対応するには,まずWCAG 2.0を理解することが重要です.そこで,もうすぐ公開される新しいワーキングドラフトを元に,WCAG 2.0の現状をお話します.

4.1 WCAG 2.0本文

WCAG 2.0では,主に以下の点が,WCAG 1.0と異なっています.

4.2 WCAG 2.0の国際化

昨年10月に横浜で開催されたW3Cの会議以来,JIS作業部会はWCAGワーキンググループと密接に連絡を取っており,渡辺は,ウェブアクセシビリティ国際規格調査研究部会以外にもWCAGワーキンググループのレギュラーメンバーとして活動しています.また,ウェブアクセシビリティ国際規格調査研究部会には,(WCAGやWAIのメンバーではありませんが)W3Cのメンバーにも参加してもらっています.

渡辺は本研究部会のメンバーと協力して,WCAG 2.0のHTML技術とCSS技術のワーキングドラフトに,日本(アジアなどの漢字文化圏)固有のアクセシビリティ問題を書き込む作業に,この夏に取り組みます.また,ガイドライン本文にも同様の問題を入れる必要があれば,その作業も開始したいと思っています.これは,JIS X 8341-3の成果をWCAG 2.0に還元することでもあります.こうした作業を通じて,JIS X 8341-3:2004とWCAG 2.0の差を埋め,WCAG 2.0がW3Cの勧告となったときに日本がそれに対応するのを容易にしたいと思っています.

WCAGのガイドラインは英語で書かれているので,日本人が読んだり意見を言ったりすることが困難です.そこでウェブアクセシビリティ国際規格調査研究部会では,今日公開されたWCAG 2.0のワーキングドラフトの和訳を作成し,INSTACのウェブサイトで公開する予定です.皆様もこの和訳や英語本文をご覧になって,WCAG 2.0に対する建設的なコメントを発言してください.

4.3 WCAG 2.0関連文書のリンク

最後に,今回公開される文書のリンクをまとめます:(7月31日午前10時現在まだ公開されていないのでリンクは空のままです.公開されたらリンクを埋めます.)

5. 最後に

今後の予定...